第11話 相続財産が分割されない場合

これまでお話してきたことからもわかるように、相続人が納める相続税は、誰がどの財産を相続するか決まらなければ計算ができません。しかし、相続争いなどにより、相続税の申告期限までに遺産の分割がなされないこともままあります。

このような場合(未分割)であっても、申告を先延ばしするわけにはいきません。

相続人が、法定相続分(民法で規定されている相続分)で財産をもらったものと仮定して、相続税を計算し、税金を納付しなければならないのです。

その後、遺産分割がまとまり、誰がどの財産を相続するか決まったときには、相続税を計算し直して、税額が増える人は修正申告をし、税額が減る人は更正の請求の手続きをすることとなります。

 

ただし、このような未分割の状態での申告や納税は、不利な取扱いをうけることがあります。

 

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の評価の特例は分割された財産についてのみ適用の対象となります。よって、未分割での申告においては、税金を安くするこれらの規定の適用ができないため、納税額が大きくなってしまうのです。このため、配偶者の取得分だけを先に分割協議する場合もよくあります。ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告することにより、後日遺産分割が調って相続税を計算し直すときには、これらの規定を適用したうえで相続税を計算し、払いすぎた税金は戻してもらうことが可能となります。

申告期限までに分割協議が調っていれば、期限内に現金一括納付が可能であったのに、分割協議が調わなかったために銀行預金の解約ができずに延納(相続税の分割払い)の手続きをとり、本来なら不要な延納利子税の負担が生じてしまうような場合も考えられます。

そのほかにも遺産分割が調っていないために受けることができない不利な取扱いはまだあります。

相続税の節税や納税資金対策だけでなく、相続争いにならないような生前の対策も重要な相続対策のひとつとなるのです。